色彩
※伊作が盲目です。

僕の世界は真っ暗だ。四年生の時の実習で、僕は視力を失った。忍者の卵として、当時は絶望的だった。でもどうしても皆と一緒に卒業したいという僕の我が儘を汲んで、皆が手助けをしてくれたから、最高学年として今この学園に居ることが出来ている。卒業した後忍者になるかは別として、元々忍者になる為に訓練していたから、気配などを察知して一人でも行動出来るし、戦闘も軽いものであれば問題ない。今ではこの日常が当たり前になっている。そして。

「伊作、朝顔が咲いてる。紫と薄桃のが四つ」

僕の最愛の人。視力を失った日からずっと留三郎は僕と一緒だ。自分の見たものを、詳しく僕に教えてくれるから、僕は頭の中でそれを想像する。そうすると、留三郎と世界を共有している感覚になって、とても幸せな気分になる。

「本当?今日は風が少しあったかいもんね」
「ああ、雲は少し出てるけど空も真っ青だ」

留三郎はきっと戸を大きく開けて空を仰ぎ見ているだろう。大体のことは雰囲気や声色で分かる。視力を失ってしまった時は、もしいつか留三郎の顔すらも思い出せなくなってしまったら、と不安で押しつぶされそうになった時もあったけれど、そんなの杞憂だった。時を重ねれば重ねる程、手に取るように分かるのだ。

「今日の実技テスト大丈夫かなぁ」
「心配いらねーって、俺も一緒だし。ほら、早く布団畳んで飯いこうぜ」
「そうだね、今日のおかずは何だろう。蒲鉾が食べたい気分なんだけど」
「俺は冷や奴。何がでるか賭けようぜ」
「いいよー、じゃあ僕は蒲鉾ね」




ねぇ留三郎、僕の世界は真っ暗だ。
でもね、君のいる所は、鮮やかな緑色が見えるんだ。


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つい最近、大学で色盲の女の子と友達になりました。
彼女は色の区別や解釈が私達と異なるんですけど、それ故にとても他の人には真似できないような絵の具の使い方をします。
もう感動してしまって、このお話をばば!!っと。
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